妊娠中「体重増加は10kg以内で!」と厳しく言われた経験のあるママさん、結構いらっしゃるのではないでしょうか?
妊婦の体重制限を設けている医療機関や助産院は意外と多く、実際「10kg以上体重が増えたら当院での出産はお断りしています。その際は転院となりますので!」と言われた私の友達もいます。
体重制限の元来の目的は、
1.妊娠中の急激な体重増加に伴う様々な疾患予防
2.産道に脂肪がつき難産になるのを防ぐ
等が挙げられるそうですが、どうも体重制限に厳し過ぎるように感じるのは私だけでしょうか?
私自身、妊娠中に体重が+10kgになったところで、一週間食べたもの全てを記入する紙を渡され栄養指導なるものを受けました。
そして、かなり横幅のある看護師さんに「あなた、食べ過ぎじゃな~い!?」と言われ不快に思った記憶が。。。。
しかし色々調べてみると妊婦に厳しい体重制限を設けているのは世界でも日本くらいのようです。
予防医療コンサルタント・栄養コンサルタントとして、女性の体について研究、発表するチーム「ラブテリ 東京&NY」を主宰する細川モモさんも妊娠中の栄養制限について警鐘を鳴らしています。
モモさんに情報共有をさせていただきたいです!とご連絡したところ「沢山の方に知っていただく事が活動の目的なので!」と快く転載をOKしてくださいましたので、以下転載させていただきます。
東京都では妊婦の救急搬送の受け入れ拒否が一時期大問題となり、その主な原因となったのが都内のNICUがすでに満床であるという現実でした。
都では医師不足以外に、NICUでの治療必要性が高まる2500グラム未満の低出生体重児の増加を指摘しています。
都の調査では、平成2年の都内の低出生体重児数は6583人だったのに対し、平成18年には約1.5倍の9564人まで増加。全国最多にのぼっています。この背景にはやはり高齢出産の増加があります。
もちろん高齢出産だけでなく、岡山大病院産科婦人科長の平松祐司教授は、無理なダイエットでやせすぎの20代の妊婦について触れ「お母さんからの栄養が足りなければ、胎児に補給される栄養も少なくなる。その結果、低体重の子供が生まれやすくなる」と指摘しています。
とくに東京都は痩せ女性が多いですね。
母体の栄養状態と赤ちゃんの発育には関係があるのかと聞かれたら迷うことなくYesですが、私たちは低出生体重児を減らすために日本でそれを研究し、実証するためのチームでもあります。
ただ、米国やオランダではダイエットではなくマクロビオティック実践者の赤ちゃんの栄養状態を対象にした研究がすでに行われています(※1)
マクロビそのものの良し悪しではなく、母親が痩せ傾向にあることや貧血を含めて栄養状態に偏りが生じやすいという理由ではダイエット症候群の女性たちによく似ているため、注目しています。
オランダで出産したマクロビ家庭の赤ちゃんの95%にあたる53名に対して混合縦断的研究を行った研究結果では、マクロビ家庭で生まれた体重2500未満の赤ちゃんは4.3%で、オランダ人全体の2.0%に比べ有意に多かったことが報告されています。
さらに、栄養障害の認められた赤ちゃん(27名)に対し、介入試験を行い、50品目のマクロビ食品および母乳についても栄養素濃度を測定した結果、マクロビ児は総エネルギー摂取量・タンパク質摂取量・カルシウム・ビタミンB2・ビタミンB12摂取が対照群に比べかなり低く、鉄摂取が高いにもかかわらずマクロビ児の15%に鉄欠乏が見られ、対照群には鉄欠乏は見られなかったそうです。
また、気になるのは夏ではマクロビ児の無症状のくる病率は17%(対照群は0%)、症状のあるくる病率28%と合わせて45%、冬季はトータルでマクロビ児のくる病率は90%にもなったことです。
血清中25-ヒドロキシビタミンD濃度の低さと食事中に含まれる食物繊維の摂取の多さが血清中カルシウム濃度の低さおよびくる病の症状発現の一因となっていたことが報告されていますが、これは決して仮説ではなくて米国でも日本でもすでに実例として報告されていることなんですね。
ビタミンDの原材料はコレステロールですから、過度なダイエットや食事制限で体内の栄養状態に影響する因子をいたずらに減らすべきではありません(産後ダイエットを含めて)
結果として妊娠・出産にリスクが生じれば幸せの絶頂であるはずの家族にとって悲しいお産になってしまう可能性があるだけでなく、NICUでの治療には常に高額な医療費を費やしていることも忘れてはいけないと思います。
糖質制限であれマクロビであれ、制限食というのは目的をもって行う分には有効だと思っています。それにより諸症状が改善することももちろんあるでしょう。なので、否定派ではありません。
ただ、妊娠前の女性や育児中の家庭の日常食として取り入れるべきかは是非を問う必要があり、すでに20代女性の痩せ問題・ダイエット意識の低年齢化・高齢出産出産社会・低出生体重児増加・NICU満床・新生児ビタミンD欠乏症etc…という、これでもかという難題を妊娠・出産において抱え込んでいる国において予防医療を推奨する身としては
「女性の皆さん、まずしっかり食べてください」
この言葉から始めなくてはいけません。
上記のオランダの研究では低出生体重児の割合が多かった被験者には総エネルギー摂取不足が見られたと報告されていますが、マクロビやダイエット意識に関わらず日本女性のエネルギー摂取状況には終戦直後を下回り(※2)、 とくに20代女性は他の世代(50代1937kcal)と比較しても明らかに低い(1612kcal)です。これは朝食欠食も要因。
避けられない高齢出産時代を迎えたからこそダイエット法や食事法についてはよくよく考えなくてはいけませんし、これからは痩せる<引き締める!
+α
20代女性の喫煙率の増加問題には社会全体で取り組んでいかなくてはいけません。
どんな命も回避できるリスクは回避し、この世に誕生するのに最大限の祝福をもって迎えてあげたいと願う私たちなのです。
All the best wishes for your new baby☆
-Baby Book-
※1 PC Dagnelie and WA van Staveren. Macrobiotic nutrition and child health: results of a population-based, mixed-longitudinal cohort study in The Netherlands. American Journal of Clinical Nutrition, Vol 59, 1187S-1196S ・Zen macrobiotic diets. The Journal of the American Medical Association. 218:397, 1971. ・Nutritional Aspects of Vegetarianism, Health Foods, and Fad Diets(Zen Macrobiotic Dietary Problems in Infancy ) Committee on Nutrition. PEDIATRICS Vol. 59 No. 3 March 1977, pp. 460-464 ・De Graaf T; Van de Bovenkamp P; Van Staveren WA; Willems MAW:The composition of cereal-water porridges as given to macrobiotically fed infants. 01. Nov.1987 / Voeding / Vol. 48 / Archiv-Nr: GO1987110001 van den Berg H, Daqnelie PC, van Staveren WA. Vitamin B12 and seaweed, Lancet. 1988 Jan 30;1(8579):242-3. ・DR Miller, BL Specker, ML Ho, and EJ Norman. Vitamin B12 status in a macrobiotic community.The American Journal of Clinical Nutrition 1991; 53: 524-9. ※2 平成22年度「国民健康・栄養調査」
【プロフィール】
細川モモ(ほそかわ・もも)
予防医療コンサルタント、栄養コンサルタント。 2011~2013 ミス・ユニバ−ス・ジャパン オフィシャルトレーナー。 両親の末期がん闘病がきっかけで予防医療の道へ進み、欧米の先進的な取り組みや栄養学について7年以上現地で学ぶ。東京とニューヨークに支部を構える予防医療プロジェクト「ラブテリ 東京&NY」を発足、主宰者に。国内外の医療専門家や大学・企業とともに研究・論文発表等を行う。2012年には世界規模の「卵巣年齢研究」に着手し、NHKテレビで取り上げられる。
タニタとつくる美人の習慣/講談社
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